コロナウイルスの感染拡大による日本での緊急帰国&待機を経て、2021年5月に無事にブータンに戻ることができました。
一年の時を経てのブータン再赴任となりましたが、たかが一年です。そうそう変わるもんじゃありません。
そう思ってブータンに戻ったところ、見たこともない身なりの人たちが大勢いました。
全身オレンジの、「ティモンディ高岸さん」を思わせる色合いの人たち。
実はこの人たちは、コロナ禍で必要不可欠ちなった職業である『デスップ』の人たちです。
今回はそんなデスップについてと、コロナ禍でのブータンを紹介してみようと思います。
【ブータンにおけるコロナウイルスの影響】
コロナウイルスが最初に発見されたとされる中国に隣接しています。
とはいえ、ブータンと中国の国境部分は人の住まない山脈地域であり、直接人が行き来することはありません。
一方インドとブータンの国境部分には街があり、人の行き来は盛んにあります。
ご存知の通りインドでは比較的早い段階でコロナウイルス感染者が発見され、あっという間に国中に広がっていきました。それを受け、ブータンでは本格的なコロナウイルス対策が始まりました。
インドとの国境部分ではかなり厳しい対策を実施し、最低限の行き来だけとなりました。
ブータン国内ではじめてコロナウイルス感染者が確認されたのは、2020年3月6日。インド経由でブータンを訪れた米国からの観光客でした。その後その旅行者のパートナーや他国から帰国したブータン人学生の陽性が確認されたものの、ブータン国内での感染には至りませんでした。
その後国内においてちらほらコロナウイルス陽性者が確認されたものの、爆発的な感染には至っておりません。
ブータン初のコロナウイルス陽性者が発見された2020年3月6日から、1年半以上経った2021年10月24日現在の最新情報をお伝えします。
コロナウイルス陽性の、累計の確認者数が2617名(リアルタイムでの陽性者9名、 回復済み2605名、死亡者3名)です。
これはブータンの保健省から正式に発表されているものです。
累計でたったこれだけの数値。
このようにコロナウイルスの感染拡大を防いでいるのには、「デスップ」の人たちの働きがありました。
【デスップという仕事】
デスップとは、訓練を受けたボランティアの団体のことです。
デスップの活動は多岐にわたります。
- ワクチン接種会場での誘導や体調不良者の看護
- 隔離施設の管理、サポート
- 街のパトロール
- ロックダウン中の見回り、物資供給
【どんな人がデスップに?】
↑こちらの記事の『ブータンの産業』で簡単に紹介をしています。
コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、ブータンの観光業は壊滅的な被害を受けました。
ブータンの国民の多くは観光業に従事しており、その人たちの収入は0に。
そこでブータンの国王様は、観光業に従事している国民を対象に救済支援として1ヶ月の給付金配布を実施しました。
それに感銘を受けた国民の多くが、国王様への恩返しを目的としてデスップになったわけです。
また、こちらの記事で紹介していますが↓
ブータン人の特に若者の失業率が非常に高いです。
コロナウイルスの感染拡大により、コロナ対策のために人手が必要になりました。そこで手に職のなかった若者がデスップとして活動をしているパターンも多いようです。
その場合は2日デスップとして活動をし、2日休養というサイクルで働いているようです。
デスップの中には普段公務員をしており、土日だけデスップとして活動をしている人たちもいるようです。
【最後に】
僕は今まで見たことはなかったのですが、コロナが始まる前からこの団体はあったようです。
自警団として活動をしていて、政府からの要請があった時だけ活動をしていたんだとか。
それがこのコロナ禍で必要とされ、職としても注目されて一気にメジャーになったようです。
僕の知り合いでも無職だった人たちの多くがデスップとして働いています。
志願者は誰でも訓練を受けることができるようです。
「無職」でなく「デスップ」になることで、多くの若者が誇りを持つことができ、すごく良い効果があったように思います。
僕の身近なところで言うと、ブータンに戻った直後の3週間の隔離生活の際に、毎日食事や生活用品を届けてくれました。
また、勤務先の学校にもいつも数名のデスップの方々がいます。
今やブータンになくてはならない人たちになっています。
そんなデスップの話でした。
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