東京オリンピック 感染症対策の実態
選手団の一員
として、バブルの内側から見て
 

今回は、東京オリンピックでの『感染症対策』について。
選手団の一員として見てきた実際の部分感じたことを紹介します。
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ご存知の方が多いと思いますが、今回の東京オリンピック・パラリンピックでは、感染症対策として「バブル方式」という対策がとられています。

バブル方式とは、「開催地を大きな泡で包むように囲い、選手やコーチ・関係者を隔離し、外部の人達と接触を遮断する」方法のことです。
入国前のPCR検査入国後のPCR検査。そして大会期間中にも定期的に検査を行います。それだけではなく、移動制限・行動制限も厳しく「ホテルと練習会場・会場以外には原則移動できない」ようにします。

これが今回のオリンピック・パラリンピックでとられた、バブル方式です。


この『バブル方式』について実際どうだったのかバブルの内側から見えたことを解説していきます。



 

アプリでの管理

今回のオリンピック・パラリンピック参加者全員に、あるアプリのインストールが義務付けられていました。こちらの『OCHA』というアプリです。
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これは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会関係者向けのアプリで、
日本への入国手続きの効率化や、日本国内滞在中の健康状態の登録等をするためのアプリです。

日本入国前に、関係者それぞれがこのアプリに自分の情報を登録します。検疫質問票の作成や税関申告もこのアプリ内で行うので、日本に到着してからの入国手続きがスムーズになります。
 
日本の空港に到着してから、東京オリンピック・パラリンピックのスタッフの方が、このアプリを通して入国手続きをしてくださいました。

 

入国前のPCR検査

これは徹底して行われていました。
それぞれの国で2回のPCR検査を行わなければなりません。
そして出国前に陰性証明書を準備します。

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これを『OCHA』にアップするか、紙で持参します。
これがなければ空港で止められてしまいます。
入国ができません
 

入国後のPCR検査

これは空港で行われていました。
空港到着後、オリンピック関係者は普段とは別ルートで入国手続き等を行います。

入国手続きを終えるとすぐに、PCR検査のためのスペースが設置してありました。
そこで検体である唾液を提出し、空港内結果を待ちます。
もちろん一般の方はいないスペースです。

結果が出るまでに40分ほどでした。
そして陰性という結果がでたら、やっとバスで選手村に向かいます。

 
つまり、入国前入国後2回のPCR検査を通過しなければ選手村には入れないので、理論上バブルの中にはコロナウイルスはないということになります。
 

大会期間中の定期的な検査

選手村では、滞在している関係者1人ずつに、
滞在予定日数分検査キットが配られます。

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各国代表者が毎朝検体を集め、
選手村内の検査施設へ提出します。
 
検査キットにはそれぞれに割り振られたバーコードがついていました。
これによって誰の検体なのかがわかります。
 
毎朝全ての関係者が提出するので、もし感染者がいたらすぐに見つかり隔離されます。
なので選手村では安心して過ごすことができました。


移動制限・行動制限

オリンピックのために来日した各国選手団は、特別な理由がない限りは選手村で生活をします。
(国やチームの方針で、ホテルにまとまって宿泊をしているチームもありました)

原則外出は認めておらず選手村試合会場練習会場三箇所しか行けないことになっています。
試合会場や練習会場への移動は、専用のバスハイヤー、特例でタクシーを使えることになっています。



【バス】
オリンピック・パラリンピック関係者のために用意された専用のバスです。
 
今回の東京オリンピックは33競技あります。
それぞれの競技ごとに会場は違います
そして試合会場練習会場別で用意してあります。
そこへの送迎のために、30分〜1時間おきにバスが選手村を出発します。
 
かなりの数のバスが必要ということで、全国の観光バスがオリンピック・パラリンピック関係者の輸送のために東京に集まったそうです。


【ハイヤー】
こちらも東京オリンピック・パラリンピック関係者の移動専用に用意されているようです。
とはいえ僕らはバスを使っていました。

パラリンピック選手など、バス利用が難しい場合に利用されるのかもしれません。


【タクシー】
こちらは「TCTサービス」(Transport by Chartered Taxi=借上げタクシーによる輸送)と名付けられたもので、ハイヤー車両が足りない場合に利用されるサービスのようです。
 
僕ら関係者は、前日までに予約をすればこのサービスを利用できました。
予約をして送迎用のハイヤーが足りない場合にはタクシーが来てくれるというもののようです。

このサービスによって、タクシーで試合会場や練習会場との行き来ができます。
 

 
が、このタクシーサービス少し問題があるように感じました。


 
と言うのもこのサービスは、都内を走っている一般の方が利用しているタクシーを、臨時でオリンピック関係者が利用させてもらうというものです。

オリンピック・パラリンピック関係者が乗るときは専用のステッカーを付けて区別できるようにするようですが、
僕ら関係者の送迎が終わったらまた、一般的なタクシーとして一般乗客を乗せるようです。
 
つまり同じタイミングでは乗らないものの、同じ座席を同じように一般乗客とオリンピック関係者が利用します。

 
いくら消毒しているとは言え、感染の可能性はあると思います。ここからコロナウイルスがバブルの中に持ち込まれる可能性があるのではないかと思ってしまいました。
 

選手村の外出禁止、実際は

最後に実際、選手村から直接外に出れるかどうかについて。

これははっきり言ってしまうと、出ることは可能です。

原則外出禁止ということになっています。
ルール上はダメですが、やろうと思えばできてしまいます


どういうことか、詳しく説明していきます。


まず、僕らオリンピック・パラリンピック関係者は、
それぞれが1人一枚ずつ『アクレディテーションカード』を所持しています。

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選手村に出入りする時(出入りと言っても、試合会場や練習会場との行き来)にこのカードが必要になります。

食堂などの施設に入る際にもチェックされます。
選手村内での身分証明書のようなものです。

これは入村日に1人一枚配布されます。


次に出入り口についてですが、選手団員の出入り口とスタッフの出入り口は分かれていました
 
選手団員の出入り口は、出入り口といってもバスターミナルです。
徒歩では出られないので、ここから決められた会場以外への外出はできません

一方、スタッフ出入り口は、徒歩での出入りとなります。


そして問題はここからです。

実は先ほどの『アクレディテーションカード』、
オリンピック選手団員だけでなく、東京オリンピック・パラリンピックのスタッフも同じように配布されています。
(記載内容は違いますが)

つまり、オリンピック選手団員もスタッフも同じようにカードを首から下げているので、スタッフかそうでないかの区別がつかなくなります
(スタッフにも外国人の方はたくさんいます)


そうです。
何となく察していると思いますが、
選手団員であってもスタッフ出入り口から出入りができます


と言うのも、
スタッフ出入り口には常にスタッフが立っていますが、出る際はカードをスキャンする必要はありません
スタッフが目視で、カードを首から下げているかの確認をしています。
 
部外者(カードを持っていない人)は出入りできませんが、カードがあれば通れます

1人ずつ厳しくチェックをすれば選手団の外出を防げるかもしれませんが、それをすると一日中大渋滞ができます。
かなりの人数のスタッフが出入りしているので。


一方スタッフ出入り口から選手村に入る際は、目視だけのチェックではありません。
荷物チェック体温チェックアグレディテーションカードによる個人特定のためのスキャンの必要があります。

しかし、機械に記録が残るものの、カードを持っていれば選手村に戻ることが可能です
止められることはありません。



よって、来日した選手団員であってもスタッフ同様に選手村への出入りができます。
 
 
 
とどのつまり、
原則外出は禁止というルールはありますが、その気になれば選手村オリンピック選手団員は選手村からの出入りができます。
ただ、上記のように何時に誰が入村したという記録は顔写真と共に記録に残るので、
外出したことは本部に把握され、誰がルールを破ったのか特定されています。 


実際、来日した選手団の中で試合後に外出している選手はいました。
近くのコンビニへ酒類を買いに行く選手団員もちらほらいました。

試合前だと出場権剥奪などの処分を受ける可能性がありますが、試合後はその心配もありません。
やっとプレッシャーから解放され、少し無茶をしてでも外に出たくなる気持ちはわかります。



結局のところ、その気になれば外には出られます。
そこからコロナウイルスを持ち込むことは十分にあり得ます



まとめ

日本入国前、そして入国後にPCR検査が行なわれており、
陰性と判断された人しか選手村には入れません。

そして入村後の移動手段は限られており、
基本的にはバブルによって外側と内側ではわけられているため、
バブルの中にウイルスはないということになります。

 
しかし、
TCTサービス』によってタクシーを利用した場合は、外部の人と同じ座席を利用するため、
コロナウイルスを持ち込んでしまう可能性はあります

また、
その気になれば選手村から直接外に出て帰ってくることは可能であり、
その点ではバブルには穴があったということになります。



結果としてオリンピック開催期間中に選手村の中では、オリンピック出場選手を含めた数名のコロナウイルス感染者が見つかりました。

結果からも、バブルに穴があったということになります。



最後に

これは僕の勝手な感想です。

きっと日本ではかなり前から、たくさんの方がたくさんの案を出して、練りに練って今回のバブル方式が採用され、オリンピックが行われたことでしょう。
 
それだけ練られた対策を講じても、選手村の中で数名のコロナウイルス感染者は出てしまいました。
しかしそもそも、感染の可能性をゼロにするのは不可能だったのかもしれません。

むしろ、バブルの中で感染爆発を起こすことなく、よく感染者を最小限に抑え込んだと言ってもいいと思います。


こんな世の中で開催が難しいのにも関わらず、たくさんの人が考え、そして行動して、なんとか東京オリンピックが開催されました。
そして選手村や関係施設で感染爆発が起こることなく、無事に競技が行わり、閉会式を迎えました。

この調子なら、パラリンピックも順調に行われることと思います。


賛否両論あると思いますし、オリンピック・パラリンピック開催に対する否定的な意見はかなり多いと思います。
 
が、このオリンピック・パラリンピックの舞台を目標に、何年も頑張り続けてきた選手世界中にいます。
そして今回、そんな世界中の選手たち努力の成果を発揮できる場所が提供されました。

また、たくさんの日本の方々のおかげで、東京オリンピックという大イベント無事に幕を下ろしました。

僕はこのオリンピック・パラリンピックの開催に向けて、全力を尽くしてくださった全ての方感謝したいです。



ありがとうございました。 





 
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